Codex × Obsidian上級編:Markdownだけで作る軽量RAGとAI知識基盤
前回は、ObsidianをCodexの「外部記憶」として使う方法を紹介しました。
次の段階では、単にCodexがVaultを読むだけでは足りません。
重要なのは、必要な知識をCodex自身が選ぶこと、古い情報を避けること、確認済みの事実だけを使うこと、そして使い終わった知識を再利用可能な形で戻すことです。
ここまで来ると、Obsidianは単なるノート置き場ではなく、Codexが利用する「知識基盤」に変わります。
上級編のゴール
目指す構成は次の通りです。
Sources → Research → Decisions → Codex → Drafts → Published
さらに、Codexは依頼内容に応じて必要なノートだけを読みます。
人間が毎回ファイルを指定する状態から、Codexが自分で読むべき知識を判断する状態へ進化させます。
1. VaultをAI向けに分ける
おすすめ構成は次の通りです。
Sources/:原資料や一次情報Research/:確認済みの事実や調査結果Decisions/:過去に何を選び、なぜそう判断したかDrafts/:生成中の文書Published/:完成済みの成果物TODO/:未確認事項や追加調査
この構成にすると、Codexにルーティングルールを持たせやすくなります。
2. frontmatterで「知識の品質」を管理する
Markdownの先頭にメタデータを持たせます。
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type: research
topic: pixel
status: verified
updated: 2026-08-15
expires: 2027-02-15
source_count: 5
confidence: high
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Codexには、「status: verifiedで、expiresを過ぎていないResearchだけ使う」と指示できます。
これで古いノートを誤って使うリスクを減らせます。
3. Decisionsフォルダが意外と重要
Researchには事実を保存します。一方、Decisionsには判断を保存します。
- Pixel 11 Proを推した理由
- なぜこのSEOタイトルにしたか
- なぜこの構成を採用したか
- 前回の失敗と改善点
AIは事実だけでなく、過去にどう判断したかも読めると一貫性が上がります。
4. Markdownだけで軽量RAGを作る
本格的なRAGではベクトルDBを使うことがあります。
ただし個人利用なら、いきなりそこまで複雑にする必要はありません。
まずは、フォルダ、タグ、frontmatter、ファイル名、MOCを使って必要なノートを絞ります。
流れは、質問 → 該当フォルダを選択 → frontmatterで絞る → 関連ノートを読む → 生成です。
厳密な意味でのRAGそのものではありませんが、実用上は「検索してから生成する」軽量なRAG風運用として使えます。
5. Codexに自動ルーティングさせる
AGENTS.mdに、たとえば次のようなルールを書きます。
- 製品仕様はResearchを読む
- 過去判断はDecisionsを読む
- 未確認情報はTODOを見る
- Publishedは参考用で編集しない
- Sourcesは原則読み取り専用
- 最新のverifiedノートを優先する
これにより、「Pixel 11 Proの記事を書いて」とだけ依頼しても、Codexが読む場所を判断しやすくなります。
6. 普遍ルールはAIに変更させない
Codexに自由度を与えるほど、もうひとつ重要になるのが「AIに変えさせてはいけないルール」を決めることです。
記事ごとの見出し数やキーワード、対象読者のような条件は変わっても構いません。
一方で、文章の人格や事実の扱い方までAIに最適化させると、記事ごとに口調がぶれたり、いかにもAIが書いたような文章になったり、自分のブログらしさが失われる可能性があります。
そこで、ルールをPermanent RulesとProject Rulesに分けます。
Permanent Rules:変更禁止の普遍ルール
Permanent Rulesには、記事やプロジェクトが変わっても維持したい方針を書きます。
- AI特有の大げさで抽象的な表現を避ける
- 記事全体で日本語の口調を統一する
- 不要な「非常に」「圧倒的」「革新的」などを多用しない
- 同じ意味の表現を何度も繰り返さない
- 結論を不必要に引き延ばさない
- 根拠のない事実を追加しない
- 出典のない数値や日付を勝手に生成しない
- 読者を過度に煽る表現を使わない
- 公開前には人間が確認する
- Permanent Rules自体をCodexが変更・削除・緩和しない
特に最後の「このルール自体を変更させない」という指定が重要です。
Project Rules:案件ごとに変えてよいルール
一方、Project Rulesは柔軟に変更します。
- 記事の文字数
- 見出し数
- 対象読者
- SEOキーワード
- 比較対象
- 出力形式
- 対象フォルダ
- 今回だけ使う資料
つまり、AIに自由を与える範囲と、絶対に守らせる境界を分けるわけです。
AGENTS.mdにも変更禁止を明記する
たとえばAGENTS.mdの冒頭に、次のような考え方を置きます。
# Permanent Rules
以下のルールは変更・削除・緩和しない。
- AIっぽい大げさで抽象的な文章を避ける
- 日本語の口調を記事全体で統一する
- 根拠のない事実を追加しない
- 出典のない数値や日付を生成しない
- 読者を過度に煽らない
- Permanent Rules自体を編集しない
この考え方は文章生成だけではありません。ファイル削除、公開判断、認証情報の扱いなど、絶対にAIへ自己変更させたくない運用ルールにも使えます。
Codexが賢くなっても、自分の文章スタイルや判断基準までAIに最適化させないことが、長期運用では重要です。
7. 知識の「期限切れ」を管理する
AI知識基盤で怖いのは、古い情報をそのまま使ってしまうことです。
そこでexpiresを使います。
たとえば価格情報なら数か月、製品仕様なら一定期間、制度情報ならより短い期間など、情報ごとに更新期限を決めます。
Codexには、「期限切れResearchは使用せず、要再調査としてTODOへ追加」と指示できます。
8. Codexに定期監査させる
知識ベースは放置すると古くなります。
週1回や月1回、次のような項目を一覧化させます。
- expires切れ
- sourceなし
- confidence low
- 重複ノート
- TODO放置
- リンク切れ
- 更新日が古いResearch
ここまで来るとCodexは「使うAI」だけでなく、知識ベースを保守するAIにもなります。
9. NotebookLMは調査専用に寄せる
NotebookLMには大量資料を読ませ、次のような情報だけを抽出します。
- fact
- source
- date
- exception
- uncertainty
その結果をResearchへ保存し、CodexはResearchだけを読んで生成します。
これにより、調査と生成を分離できます。
10. 生成した成果物を知識へ戻す
完成した記事や文書は、Publishedへ保存します。
さらに、「この記事から新しく得た判断や知見をDecisionsへ追記」まで行うと、知識ベースが循環します。
読む → 作る → 学ぶ → 保存するというループです。
11. Gitを使ってAI編集を監査する
上級運用ではGitがかなり重要です。
Codexが大量編集した場合でも、何を変えたか、どのファイルを変えたか、元に戻せるかを確認できます。
AIに自由度を与えるほど、ロールバック手段も必要になります。
12. 半自律ブログ運用
ブログ用途なら最終形は次のようになります。
NotebookLMで資料確認 → Obsidian Researchへ事実保存 → Codexが必要ノートを選択 → ChatGPTで切り口・構成レビュー → CodexでBlogger用HTML生成 → 人間が確認・承認 → Bloggerへ反映
完全自動ではなく、人間の承認を残すのがポイントです。
事実確認、タイトル、結論、公開判断などは人間が確認した方が安全です。
13. さらに先はベクトルDBやMCP
Vaultが数千〜数万ノート規模になれば、Markdownだけの検索では限界が出る可能性があります。
その段階で、次のような拡張を検討できます。
- ベクトルDB
- 埋め込み検索
- MCP
- 専用インデックス
- ローカル検索サービス
ただし、最初から導入する必要はありません。
まずMarkdownとfrontmatterで運用し、限界が見えてから拡張する方が管理しやすいです。
まとめ
上級編では、Obsidianを単なるCodexの外部記憶として使うだけではありません。
Codexが自分で必要な知識を選び、古い情報を避け、使った結果を再び知識へ戻すところまで発展させます。
そして、その自由度を高めるほど、AIに変更させない普遍ルールを明確にすることが重要になります。
重要なのは、次のポイントです。
- 構造化
- メタデータ
- 鮮度管理
- 自動ルーティング
- Permanent RulesとProject Rulesの分離
- 文章の口調・事実ルールの固定
- 定期監査
- 人間承認
- ロールバック
ここまで設計すると、Obsidianはノートアプリではなく、Codexが読み、判断し、保守できる個人向けAI知識基盤になります。
AIエージェントには自由を与える。ただし、文章の人格、事実の扱い、安全に関わるルールまで自由に変更させない。この境界を作ることが、長く使えるAI知識基盤の重要な設計になります。
そして次のステップは、Markdownだけの軽量RAGから、ベクトル検索やMCPを使った本格的なエージェント基盤へ進むことです。
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